相続税の配偶者の税額軽減

 

相続税の配偶者の税額軽減とは、相続税の計算において被相続人の配偶者が財産を取得した場合に、相続財産1億6,000万円又は相続財産の2分の1のいずれか少ない金額までは税額軽減額があるため課税されないというものです。

 

したがって、多額の相続財産がない限り相続人の中に被相続人の配偶者がいる場合の相続(一時相続といいます)では、配偶者が全ての財産を取得する場合には相続税がかからないことになります。

詳しい相続税の計算方法については下記の図並びに下記のリンク先を参照してください。

 

 

 

二次相続対策

 

 

では、相続人の中に被相続人の配偶者がいる場合の相続は配偶者に可能な限り財産を取得させればよいかというとそういうことでもありません。

 

なぜかいうと、一時相続と二次相続(当該配偶者の相続)では下記の点が異なるからです。

  • 相続人の人数が異なる。(通常一時相続から一人人数が減ります)
  • 相続人の人数が減ったことにより基礎控除額が下がる
  • 相続人の人数が減ったことにより課税遺産総額(相続財産額から基礎控除を控除した金額)を按分する法定相続分が異なる

他にも相続人の人数が減るということは生命保険金の非課税枠の金額が下がるなど、基本的には相続税額が上がる効果をもたらします。

 

したがって、一次相続で被相続人の配偶者が全ての財産を取得してしまうと二次相続で多額の相続税額がかかるかもしれないということを踏まえて一次相続の分割協議を行うことが重要です。

 

では、二次相続を考慮して分配した例を見てみましょう。

下記の図は相続人が配偶者と子供お一人の一次相続時に二次相続まで考慮するとどうなるかグラフで示した図となります。

 

 

一番下部に記載されているパーセント(%)は一次相続時に配偶者が相続財産を取得する割合、左側の金額は相続税額、青の線は一次相続時の相続税額、オレンジの線は二次相続時の相続税額、黒の棒グラフは一次と二次の相続税額の合計となります。

 

もちろん課税遺産総額の金額や配偶者の方が固有に持っている財産の金額、今後の資金計画によってこの表の形は異なりますが、多くの場合上記の図のように一次相続において配偶者が財産を多く取得する方が一次相続時には相続税額が低くなり、二次相続時には相続税が高くなります。

 

上記の図の場合も一次相続で配偶者の方が全ての財産を取得した場合には、相続税額がゼロとなりますが、二次相続時に多額の相続税がかかることとなります。

 

そこで、一次相続でお子様が50%程度の財産を取得するようにすることで、二次相続と合わせた合計の相続税額を大幅に減らすことができました。(上記図だけ見ると一次相続時に配偶者が40%程度の相続財産を取得するのが税金計算上は望ましいですが、財産内容やお気持ちの部分を考慮して分割するので税計算だけで考えるわけにはいきません)

 

そもそも二次相続まで検討できるかというのが税理士を選ぶ一つのポイントかと思いますが、相続税の計算ソフトの発達等で二次相続の表を出せる税理士は増えているように感じます。ただし、実際に細かい計算内容や仕組みを理解し説明できている税理士はそこまで多くないです。相続税の申告を税理士に任せる際にはぜひこのあたりの説明ができる税理士にお任せください。